SFプロトタイピングの本が出ました
ビジネス本として考えても小説アンソロジーとして考えてもすごくポップな造本(小口もピンク色!)で、手に取った第一印象としては、ちょっとどこか懐かしさもある一冊になっていると思いました。
本屋さんによって、ビジネス書か、SFフィクションか、はたまた実用書的なものか、どんな棚に置かれるかというのが違ってきそうなこの一冊、
企業の中に創作者が入って行って一緒に何かをする。あれは、授業でもなく、セミナーとも、ワークショップともなんとなく違うような現象だったと思います。
メモを取り、ボードに貼る。これはビジネスのミーティングでは結構あることなのかもですが、実は小説の教室なんかではこういうことあんまりしない。
美大の講評でも、作品講評会の前に「エスキース講評」ってのがあって、下絵の段階で同じアトリエの人や教授、助手さんと「こういう方向ならこういうやり方も考えられそう」「こういう作品が参考になりそう」みたいなことを言いあう時間があるんですが、そういうものにも近いかもと思ったり。
巻末についている、切り離せる「思考実験カード」みたいなものがその会議の反映という感じなのかもしれません。買った方はぜひ、切り取って、この会議に参加しているような感じで楽しんでください。
この一冊で、企業やある程度の人数のいる集団のプロトタイピングのマニュアルガイドにもなると思います。
あとこれはやってみてすごく思ったのですが
この一冊が短編小説創作のすごくいいロイターボードになると気づきました。ビジネスに興味がない創作者にも手に取ってもらいたいな、と思っています。
マンガもとても良くて、巻頭にあるこの作品のテーマが「本を作る」であることもいいんですよ。本を作ること自体がひとつのビジネスでありつつ表現であり、人間全体の営為である。ということが、メタ視点で冒頭に語られているようで。
「物語が何かの役に立つ」ということに関してはあまり積極的な思いを持たないほうの人間ですが、(役に立たない物語だってもちろんあって良いし、役になんか立つもんかと思って書くことだってすごく重要なことです)こういうかたちの物語の在り方もなんだかいいな、と。
高山が書いたのは、1年近い対話の中で皆さんが「個人の思考」より「システム」のほうにすごく興味を持っていたことに新鮮さを感じて書き始めたものでした(表現者はどうしても個人の葛藤や手ざわりを重視するところがあります)。
本当に長丁場だったので、タイパでいえばすごく悪い造られかたをした本だとは思います。
逆に言えば、読まれる方には取材時間をぜいたくに使った本として楽しんでいただけたらありがたいなと思っています。
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